春の摘み草に自然との共生を想う

2021年5月は穀雨の候。
今年の春は本当に駆け足で、一瞬で通り過ぎていったようです。
我が家からの景観を見る限り、自然界の歩みは例年よりも2週間近く早いです。
桃や葡萄の農家さんたちは「例年2ヶ月で作業するところを1ヶ月でやらなきゃならなくて、手が追い付かない」と言っています。

そして5月に入ったら、5月としては異例の寒波がきて、朝晩が冷え込み、4/27には遅霜も降りました。(GW中にも我が家は薪ストーブを焚いていました)
この時期は育苗のタイミングで、我が家のようビニールハウスがないと発芽のための気温が足りなくて、なかなか発芽しません。育苗が遅れると栽培スケジュールが様々に遅れることになります。

現在、我が家の畑には収穫できる作物が本当に何もありません(笑)ネギ坊主が出ている長ネギがかろうじて残っているくらいでしょうか。
小松菜の菜花は種採りのために区画を区切って残し、人参は董が立ってそろそろ花が咲きます。
こういう時期のことを「端境期」といいます。

収穫物がない端境期には畔などに自生するニラや野蒜、芹などが嬉しくて有難い大地の恵みとなります。

今年も野蒜を草刈りや耕耘で刈り取ってしまわないように大切に残して、野蒜醤油と野蒜味噌を作りました。毎年楽しみにしている万能調味料です!

野蒜醤油だけで味付けした焼きそば。添付のたれ、要りません!一人麺ひと玉では全く足りませんでしたー。

(たくさん作れましたので野蒜醤油と野蒜味噌はオンラインショップで販売中です!本当に美味しいのでおススメです!オンラインショップはコチラから)

また5月上旬は庭や畔に生えている蛇イチゴをチンキにするために毎日少しずつ採取しています。

蛇イチゴのチンキは虫刺されによく効きます。効能を調べてみると軽度の火傷や切り傷、擦り傷、喉の痛み、口内炎などにも効くようです。なんて万能!

虫刺されと言えば、私は畑作業の時に本当によく蚊やブヨに刺されます。畑にいるときに刺されたら蛇イチゴのチンキは持ち合わせていないので、ドクダミの葉を生のまま揉んで汁を刺された箇所にすり込みます。刺された直後だとブヨでもよく効くのです!ですから、自分が作業する田畑でどこにドクダミが生えているか(農薬や除草剤などの心配がないかも含めて)必ず把握するようにしています。←本人けっこう切実。

野蒜を収穫しています。周りにはスギナと蓬も自生します。よく見ると私の手元まわりだけスギナが生えてないのがわかるでしょうか。スギナは摘んで天日干しにしてお茶にしたいところ←手が回らず後回しに。

野蒜やニラなどは自生してくるとはいえ、ほったらかしではなく、周りの草に負けないように鎌で周りを手刈りしたり、耕耘機でかき回さないように目印を立てて置いたりして「管理」しています。自生するものは生えてくる場所を人間がコントロールできないので、それぞれの植生に合わせた管理が必要です。

また犬の散歩道に当たらないか、農薬や除草剤がかかってないか、日頃からの観察はとても重要で、清潔で安全に自生している場所はとても貴重です。

また蛇イチゴは日当たりを好む植生であり、私たちがこの家に引っ越してきた当初、庭は荒れていたので蛇イチゴは生えていませんでした。毎年毎年夫が草を刈り、手を入れ続けてきた結果、蛇イチゴが生えてくるような環境になったのです。

まだ剪定をしていなかった頃の梅畑は枝が伸び放題で、草刈り機では中腰が続きました。

梅畑に生えている野蒜もまた然り。

畑を貸してくれている近所のおばあちゃんの言葉を思い出します。
「昔は春には山に入ってきのこを採りに行ったけど、今じゃ足腰が痛くて山に入れない。人が入らなくなったから、山は荒れ放題で、獣も増えたし、きのこはもう採れないかもしれないね。きのこ採りは本当に楽しかったねぇ」

ほんのつい昔まで野山から食べるものを採取することで、人の暮らしの営みが同時に自然環境を一定に保ち、結果的に人の手が入る「管理」の意味をもっていたことを実感します。

農的暮らしの営みが、毎年楽しみに繰り返す季節の手しごとの知恵と実践により、ささやかながら自然環境を持続的に保つ役に立っているのでしょう。

新しい取り組みである「農的暮らし週末実践会」では、土とつながって暮らすことや自然環境との関わりを自分ごととして実践していきます!

春の美味しくて役に立つ野草たちを摘み草しながら、人と自然の持続的な共生に想いを馳せています。