2020年の年が明けて、旧正月を迎える頃に栃木県は益子へ川尻製陶所さんを再訪しました。
前回訪れたのは2019年9月。あの時いただいた塩壺を毎日使い、その機能性の高さと佇まいの美しさにすっかり魅せられていました。
今回は主に、使っているのとは違うデザインの塩壺に出会えるのを楽しみにしていました!
登り窯の窯出しから、登り窯を囲んでのイベントなどのお忙しい合間にお時間をいただくお願いをしたにも関わらず、奥様と共に迎えてくださり、ありがとうございました!
事前にお伝えしてあったため、たくさんの塩壺を並べてくださり、ひとつひとつ手にしながら悩みに悩んで選ぶのは、心から楽しく嬉しいひとときでした。
前回訪れた後に綴ったブログにもあるように、「いのちをありがとう」という感謝の気持ちが植物や動物に伝わるような器を作りたいという川尻さん。
ご家族で家庭菜園をされながら、梅干や味噌をつくり、いつかは田んぼがやりたいと仰っています。
ですので、「塩壺を種の保存に使うのもいいかもしれませんね」と、ご自身で種採りした菜花の種を入れているのを見せてくださいました。種たちはとっても喜んでいるでしょうね♪
登り窯から出して並べられた器たち。ひとつひとつがみんな違っています。
益子の土を使うことを大切に、釉薬も人にも自然にもやさしいものを使い、
何より登り窯の薪の火で焼成した「火色」の一期一会の個性は、自然界の要素が生き生きと現われています。
土と木と火と、つくり手の手の温もり。それを手にするだけで自然界とつながり、器が記憶している温もりに触れるから、川尻さんの器は温かいのですね。
今回、一番印象的なのは登り窯の存在感でした。
奇しくも益子の他の窯元さんや、私の知り合いの窯元さんから、登り窯で焼くことがどんなに大変で、川尻さんのように年に6回も登り窯で焼いていることがどれだけ貴重なことなのかを聞くことができました。
今は多くの窯元さんが電気窯やガス窯で焼いているそうです。
薪を集めることや、登り窯に火を入れている期間は多くの人手が必要であることなど、大変なことが多いそうです。
東日本大震災の時には、益子の多くの登り窯が倒壊したそうです。川尻さんの登り窯もお父様と二人で再建したと聞きました。
それほどのご苦労があってもなお、登り窯で焼くことを大切にされている川尻さんの自然や命への熱く、温かい想いをひしひしと感じずにはいれらません。
ひとつとして同じ器がないのは、まさに自然そのもの。土や火や木、空や雲などがひとつとして同じでないように。
「料理をすることは、食材に触れることで、それを育んだ自然とつながること。」
「自然がつくるものは、決して飽きることがない。」
(「一汁一菜でよいという提案」土井善晴)
川尻さんの器を手にした時に私たちが感じることは、きっと器を通して土や木や火という自然そのものに触れている実感なのかもしれません。
『冬、土のうつわ展』
2020年2月18日(木)~3月1日(日)
自由学園明日館内JMギャラリーにて(JR池袋駅メトロポリタン口より徒歩5分、 JR目白駅より徒歩7分)
※作家在展日 3/1(日)午後
ひだまり暮らしには置いていない器もみることができるチャンスです!川尻さんが在展されるときにご都合が合う方は直接お話ができるチャンスです!!
川尻さんの温もりある器を是非お手にとってご覧くださいね!
Photo by Yasuyuki Hirose