ようやく秋の訪れを実感できる陽気となった9月中旬に、
仕事の関係で栃木県を訪れた際に益子まで足を延ばしてきました。
日本三大陶器の街 益子。
昨秋に訪れた岐阜県の多治見・土岐の器の旅から、今度は是非益子焼の器をつくっている窯元さんに出会いたいと思っていました。
益子焼のお店が多く立ち並ぶ城内坂通りを中心に20軒近くのお店を一気に見て回り、器を観る眼を磨きました。
この日宿泊したのは城内坂通りからほど近い「益古時計」さん。
木の温もりが感じられ、白を基調としたシンプルなお部屋と館内は本当に心落ち着く、素敵なプチホテルでした。
今振り返ると、この益古時計さんに宿泊したことが、その後の素晴らしいご縁をつないでくれました。
翌朝、益古時計さんの近所を散策していると「里山散歩道」という小径を見つけ、辿るうちに眺めの良い小高い丘にある小さな「登り窯→」という表示が目に留まりました。
白い壁と木のドアが素敵な建物に「売店」と看板を出す「川尻製陶所」さんでした。
散歩の朝時間にはオープンしていなかったのですが、再び城内坂通りを見て廻っても最後まで心に残っていたので、戻って売店を再訪しました。
店内の掲示に「益子の土を100%使うことにこだわり、釉薬も人体にやさしいものだけを使っています」とありました。
シンプルな形、コロンとした丸みを帯びた愛らしい形、登り窯の薪の火で焼成しているため一つ一つが同じでなく、手に取ってじっくり眺めてもどれかひとつに選び難く、あっという間に魅せられてしまいました。
登り窯の方へ声をかけたら、ちょうど窯出しの作業をされていた川尻さん。
作業の手を止めさせてしまったにも関わらず、快く対応してくださいました。
そして、「ちょうど窯出ししているので、登り窯もみていきませんか」との嬉しすぎるお誘い♡
火が落ちてから2日経っているにも関わらず、窯の入り口はまだ熱を帯びていて、窯の内部にはこれから出す器たちが並んでいました。
火が上に昇っていくのを利用した登り窯は地形を利用して造られていて、入口から階段を下りていくと、
すでに窯から出された器たちが、冷めていくときに出す「チリン、チリン」というかすかな音が聴こえました。
初めてみる登り窯の圧倒的な存在感と、先ほどまで選び難く魅せられた器たちがたくさん並ぶ空間は、静かでありながら、火や土などの大いなるエネルギーに満ち満ちていました。
一つ一つ生み出す「手」の持ち主と、
木や土や火など自然界のリアルな存在感と、
生み出されるまさにその場で、
作り手の想いを聞けることほど胸深く打たれ感動する体験は、とても貴重でした。
川尻さんの過去の言葉に「“器は命を盛る道具である”という良い言葉に出会った」とありました。
「植物や動物が命を終える最期に「命をありがとう」という感謝の気持ちが少しでも伝わるような器を作りたい、そんなことを考えながら器を作っている。」(川尻製陶所ブログより)
私たちが器を好きになったのも、自分が種まきからお世話した作物が料理されて盛りつけられる器は、その作物が喜んでくれるような器であってほしいという想いが発端だったので、この川尻さんの想いには心底共感し、感動し、なお一層器に魅かれてしまうのです。
すっかり話し込んだ後、器も悩みに悩んで選び、なんだか居心地良く離れ難くさえ感じる売店を出たら、小高い丘から夕暮れの益子の空が広がっていました。
川尻さんの器は年に何回か東京や長野で陶展を開催しているそうです。
◎川尻製陶所 器展[colors]
2019.9.17(火)~27(金)11:00~18:00 ※17日と27日は作者在廊
うつわ&カフェ かくしち(東京都東久留米市中央町2-1-34)
もちろん春と秋の益子陶器市にも出展されています。
◎益子陶器市について(益子観光協会㏋より)
そしてこの度、私たちひだまり暮らしでも川尻さんの器たちを販売させていただけるご縁をいただきました!
どれも選び難く素敵な器たち。どうぞ一つひとつ手にとってご覧くださいね。温もりのあるお気に入りの器と出会えますように!