暮らしの中の手しごとの知恵「芋茎の干し方」

霜が降りる季節になると、冬の保存食づくりが始まります。
切干し大根、たくあん、年によっては干し芋、うちの周りでは枯露柿(ころがき、干し柿のこと)、そして里芋の芋茎(ずいき)。

木枯らしによる乾燥した空気とお日様の力で、乾燥し、美味しさが凝縮する冬の保存食。

2017年の初冬。こうして畑の畔に腰かけて、おばあちゃんからたくさんのことを教わります。

畑のお師匠さまである近所のおばあちゃんから教わった芋茎の干し方は、しみじみと暮らしの知恵に満ちているなぁと思います。

2019年はしっかりと作ったので、大切に記録しておこうと思います。

1.芋茎の種類
里芋には大きな葉を支える茎(葉柄)があり、その茎が緑色をしている品種と、紫色をしている品種があります。
食用にするのは紫色の「赤芋茎」の方で、灰汁が比較的少ないためだそうです。

トトロの傘風に。手に持っている部分が葉柄。

2.干し方
①芋を収穫するのは、初霜がおりて、葉がしおれて倒れ始めた頃。霜にあたると茎の部分の皮が剥きやすくなります。

適当な長さに切って、皮(筋)を剥いていきます。灰汁があるので手がまっ黒になるので、気になる場合はゴム手袋をしてくださいね。
(私は剥きにくいので素手ですが、灰汁で真っ黒になってもお風呂に入ればその日にほぼきれいに落ちました)

②糸を使って、太い茎は適当な大きさに割いていきます。
この糸を使うのがとても簡単なのに合理的!おばあちゃんの知恵そのものだなぁと関心してしまいます。

③紐で縛る。
一本一本を洗濯ピンチで干している人をよく見かけます。
おばあちゃんは「あの干し方をする人を見ると、わかってないなぁを思うのよ」と言っていました(笑)

麻紐一本でたくさんの芋茎を束ねて、省スペースで、雨が降ってきたときに取り込むのも簡単!

保存食として作るときは「たくさん」なので、いかに省スペースであるか、干している期間の管理が簡単であることはとても重要です。

写真だとわかりづらいかもしれませんが、適当に芋茎を3~4本、真ん中を一回結んでいるだけで、それを連続していきます。

④天日干し
このまま軒先や物干しにかけておくと、数日すると乾燥して結び目がスカスカになります。(でも紐の両端から萎れて垂れ下がるので、落ちたりしないのです)

完全に乾燥したら、結び目をほどいて、一本一本を揃えて、チャック付きビニール袋などにいれて、野菜庫で保管します。

お料理の仕方は、水で戻した後、何回か洗って灰汁抜きをして、お味噌汁の具にしたり、油揚げと煮しめたり。地味深い冬の保存食です。

 

おばあちゃんと話していると、戦争中に食べるものがなくて苦労したことをたくさん聞かせてくれます。
だからこそ畑をして、食べるものを自分でつくっておくことを、80歳を超えて身体がしんどくなっても続けているのだと思います。

現代では食べるものがなくて困るということはありません。
手軽に、いつでも、食べることができます。
だから里芋の茎を食べるなんて、ここまでの手間暇をかけてまでたべるなんてと、不思議がられるかもしれませんね。

戦争を経験していない、飽食という有難い時代に生まれ育った私にも最初は「そこまでして食べなくても」という気持ちがありました。

里芋は親芋、子芋、孫芋と三世代(笑)ついているそうです。こんな風についているなんて、育ててみないとわからなかったです!

ですが今は、自分で種を蒔いたり苗を定植し、お世話し、収穫にいたった作物は、どれも愛おしささえ感じられる「尊い命」です。

だから、できる限り無駄にせず食べきることで、命をいただく感謝の気持ちを植物たちに伝えたいと思うのです。

そういう気持ちこそが一物全体という考え方のベースとなるのではないでしょうか?

おばあちゃんの経験から積み重なった暮らしの手しごとの知恵というのは、自分自身と作物も等しく命を尊び、大切にする想いの現れ。

この芋茎の処理の仕方は単なるテクニックではなく、そういうおばあちゃんの想いまで込めて、大切に受け継ぎ、実践し、伝え広めてゆきたいと思っています。

Photo by Yasuyuki Hirose