藍染職人

松本の「用の美」にたっぷり触れ、かなり興奮気味に一日を振り返りながら、山梨へ帰ろうと車を走らせた矢先。

大きな「藍染」と白く染め抜かれた文字が目を惹く藍色の布が!

玄関の灯りに文字が浮かび上がり、すっかり陽も暮れた薄暗がりにもはっきりと目を惹く存在感の「看板」。

一見して普通のお宅の門構えながら、勇気を出して門を叩いてみました。

(こういう時の行動力は我ながらすごいと感心します(笑))

ショップであればすでに閉店していてもおかしくない時間帯に、出迎えてくれた奥様は快く応接間に案内してくださいました。

奥からご主人が出迎えてくれて、お話をうかがうことができました!

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『浜染工房』さんの3代目となるご主人は型抜きをして、お米でつくった糊を重ねて、藍で型染めをされる職人さんでした。

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2代目となるお父様から手ほどきを受け、夜が明けるまで毎日修行をしたとか。

「それでもまだまだ父の足元にも及ばないし、死ぬまで極めることなんてできそうもないですよ」と仰っていました。

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特別のナイフで型を切り抜く様子。

切り抜いた型を寸分違わず重ね、糊を何度ものせていくそうで、気が遠くなるような細かい作業。

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新聞でも紹介され、皇太子さまに反物を献上したこともあるそうです。

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特別の刃物も、専門につくってくれる職人さんがいなくなってしまったそう。

両面を研ぐのは、それだけで職人技だそうです。

持つ手の爪がしっかり染まっていて、あぁ藍染職人さんなんだなぁとしみじみ。

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これは蒅(すくも)。

藍の葉を発酵させて、乾燥させた染料のかたまり。

これは明治時代の蒅で、もちろん建てればまだまだ染料として使えるそう。

石のかたまりにしか見えない。

蒅を初めて見ました!

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これは蒅の品質チェックをした「証文」で、私がつまんでいる蒅で、出来立てを和紙に押し付けて判子のようにし、写ったもので品質を判断し蒅の値がつけられたそう。

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浜さんの作品。

ものすごい繊細な模様!

反物の糸の原料で染めの濃さも千差万別になるそうです。

ものすごい技術力と労力にもかかわらず「全くお金にならない」そうで、浜さんの息子さんが跡を継ぐのかどうか…。

浜さんのような型染めの職人さんは、今はもう日本に5人も残っていないそうです。

お話をうかがっていたら、なんと浜さんのご友人の植物博士と浜さんで、藍の生葉染めを研究開発されたそう‼︎

おぉーっ、なんと!

ちょうど旦那さんが今夏に私が染めたシャツを着ていたのでお見せしたら、とてもとても喜んでくれました。

藍を育てて、生葉染めの会をしたことをとても喜んでくれ、「是非これからも藍の良さを伝えていってください」となんだかもったいない言葉をいただきました。

松本箒の米澤さんも3代目でした。

伝統ある家業の家に生まれること。

伝統を受け継いでいくこと。

現代のライフスタイルに合わせた「変化」と、変わらない技術力。

「ものをつくる」ということの意味。

「私達の作品は売れなくてもいいから、見てもらえるだけで嬉しい。」と仰っていた浜さん。

「結局は一子相伝が一番いい。」と仰っていた米澤さんのお母様。

それほど値のはらない「唐変木」の「用の美」。

なんだか色々な想いが胸いっぱいになり、とても考えてしまった松本の旅の帰路でした。

(hana)