2019年3月6日、長野県栄村へお友達を訪ねました。
お米農家を営む旧家へ嫁ぎ、ご主人とともに栄村の伝統文化や農ある暮らしを実践とともに伝え広める暮らし・活動をしていらっしゃいます。
3年前にひだまり暮らしで開催した松本箒づくりWSにご夫妻で参加いただいて以来の再会でした。
今回はお忙しい中お時間をいただいて栄村の伝統工芸「猫つぐら」の技術を応用した鍋敷きづくりを教えていただきに伺いました。
この底の部分を鍋敷きとして応用します。
短い滞在時間にも関わらず、どうしたら初心者の私にもわかりやすく、習得できるかを繰り返し試作しながら準備してくださいました!本当に感謝です!!
編む前の、藁をこの状態に準備する方が手間と時間が必要です。
竹細工なども編むよりも素材の準備の方が膨大に手間暇を必要としますね。
収穫し、脱穀後の藁をこの状態にするには、すぐいて、湿らせながら叩きます。
そして、自作の道具(写真の赤いテープが巻いてあるもの)を使いながら編んでいきます。
藁を叩く代わりに、こんな機械を通していたそうです。
超真剣!!
「あとはこれの繰り返しね」というところまで教えていただいて、せっかくなので会場となった栄村歴史文化館『こらっせ』に展示してある民具を見学させていただきました。
「冬はわらしごと」という掲示に、雪深い栄村の季節の手しごとの文化を肌で納得しました。
猫つぐらの技術は、「ぼぼつぐら」(赤ちゃん用のつぐら)や「でーこっつぐら」(大根用のつぐら)に現在も使われている現役の暮らしの手しごとです。
なかなか藁仕事の技術を継承する若い世代がいないそうです。
それでも「でーこっつぐら」をお友達は「今年の冬も使ったよー。大根をこの中に100本くらい入れて、雪に埋まってからは、必要なときに雪をかき分けて取り出すのよ」って教えてくれました。
暮らしの、季節の手しごととして、現役として使われていることにとても感動しました。
お友達のお義父さんが作られた藁靴。毎年お正月の「道祖神祭り」42歳の厄年の男性が履くという風習があり、お義父さんが頼まれて作っているそうです。
「せなかち」という民具。重いものを背負うときに背中に当てるためのものだそうです。少しずつ形が違うのは、自分の体形や使い方に合ったものを工夫しているためで、手づくりだからこその自由さを感じます。
雪深い栄村では生活必需品の「コーツキ」雪かきの道具。説明書きには「雪を掘るため」とありました。「掻く」のではなく「掘る」のですね。実際に使われていた民具としての風合いが美しいです。
栄村は新潟県と長野県の県境に程近く、雪深い土地だそうです。今年は暖冬とはいえ、山梨には雪のかけらも見当たらなかったこの日も、道路わきには除雪した雪の壁ができていました。
まだまだ積雪が残り、畑ができるようになるまでにはまだだいぶ時間が必要のようでした。
雪に閉ざされ、畑仕事はおろか、家の外に出ることさえもままならない季節がある風土が生んだ暮らしの知恵が、藁細工に代表される手しごとなのだと、実際に栄村に足を運んで肌で実感しました。
お友達のお義父さんは「雪はいいもんだ」と仰るそうです。雪がある季節の手しごとの時間が、暮らしの必需品をつくるという目的であれ、味わい深い時間なのでしょう。
栄村に向かう飯山線の車窓から見た千曲川。とうとうと流れる千曲川と山並みが育んだ風土。
そして千曲川が育んだ豊かな土壌。田んぼが一面に広がります。そして雪。
気候や風土が生んだ暮らしの文化。
お米をつくり、副産物としての藁やもみ殻、糠なども余すことなく生かしきる暮らしの知恵。
「そうしなきゃ生きてこれなかったんだろうね」というお友達のひと言がずっしりと重く、尊く感じられました。
藁細工の「職人」ではなく、当時は誰もが出来た暮らしの手しごと。
暮らしに必要だからこそ、使いやすく、無駄がなく、シンプルかつ丈夫にと磨かれたデザインはまさに用の美。
それでも現代のライフスタイルでは、残念ながら今は生きる暮らしの技術ではなく、継承者がどんどん減っているのが現状だそうです。
そんな現状を憂えて、初心者でも、特別な道具がなくても、作って使える(「使える」が大事!)鍋敷きとして、猫つぐらの技術を少しでも伝承できないかと、お友達ご夫婦は考えたそうです。
今回、私が教えていただいて、今後ひだまり暮らしの「暮らしの手しごと」としてWSをしていくことで、ほんの少し伝承のお手伝いができたらと思います。
ひだまり暮らしもお米をつくり、毎年藁がたくさん出ます。その有効活用を探していた私たちにとっては本当に素晴らしい手しごとを教えていただきました。
藁に触れ、手元に集中するひとときに、風土が生む暮らしの知恵や技術、民芸の精神や伝統技術のこと、純粋に手を動かす楽しさや手作りの品を使う嬉しさを伝え、感じてもらえるような機会にしていきたいと思っています!
ご夫妻、貴重な経験とお時間をいただきました。本当にありがとうございました!