器の眼を鍛える岐阜の旅

暖冬で地元の人も驚くほど穏やかな2月末、仕事で岐阜は土岐市を訪れました。

土岐、多治見は器の日本三大産地といわれています。
(岐阜県美濃地方の美濃焼、愛知県瀬戸地方の瀬戸焼、九州佐賀県の有田焼)

前回岐阜を訪れたときには不勉強すぎたため、今回はせっかく訪れた器の産地をできるだけたくさんの器を見ることで、自分の「器を見る眼を鍛える旅」にしようと決めていました。

まずは土岐市の道の駅 志野・織部
道の駅なので農産物を見ようと立ち寄ったところ、売り場面積の大半が器の販売で占められていて驚きました!さすが日本三大産地!

また道の駅に隣接する「織部ヒルズ」は卸問屋直営のお店が軒を連ねます。

訪れた時間帯が閉店時間に近かったため、数店しか見て回ることが出来ませんでしたが、それでも十分多くの器を一度に見ることができました。

明らかに機械で大量生産されているもの、作家さんによるこだわりの一点もの。

またそれぞれに付けられている値段も見ながら、デザイン、色合い、作り手の想いを宿しているか、付けられている値段との関連性、
そして自分の暮らしの中で使いやすいか、どんな料理を盛りつけたいとイメージが湧くか、
実際に全て手にとりながら、どんどんとインプットしていきました。

訪れたのが月曜日だったため、美術館やミュージアムが軒並み休館日だったのが惜しまれますが、多治見市の多治見駅に近い「本町オリベストリート」を訪れました。

駐車場から一番近かった「井筒」さんから。

ここが一番最初に訪れたにもかかわらず、一番のお気に入りになりました。
最後にもう一度戻ってきて、悩みに悩んでシンプルで使いやすい、びっくりするほどお安い(店内ほとんと全て5割引き)器を買い求めました。

欲を言えば、せっかく窯元直送の器が並ぶお店なので、店員の方にもっと作り手さんのことをしっかりと正確に伝えてもらえたらなぁと感じました。

井筒さんの隣にある「たじみ創造館」。

たくさんのコーナーがある中で、レジ下のすり鉢コーナーに目が釘付けになりました。
ここも他のお店を見てからまた戻ってきて、悩みに悩んで「納豆鉢」と名前のついたすり鉢を買い求めました。

お会計の際に何気なく「最近、すり鉢にとても惹かれるんです」と店員さんにお話ししたら、「ここ多治見で土岐のことを宣伝するのも何ですが(笑)、すり鉢がお好きなら土岐市にあるすり鉢館に行かれたらどうですか?」と教えていただきました。
運命の出会い「すり鉢館」!

お昼には井筒さんの隣、たじみ創造館とは反対側にあるそば処「井澤」さんへ。

入口の扉の取っ手が織部焼ってさすがです。

店内で打ったお蕎麦を汲み上げた井戸水で締め、ピカピカしてのど越しもよく本当に美味しかったです!メニューを立てかける重しや蕎麦ざるの下に敷いてある平皿まで素敵でした。

この他にも「織部 うつわ邸」「器の店 やままつ」「tsunagu」など、駆け足ながら訪れては、たくさんの器を実際に手に取って触れ、見つめ、インプットしました。

もっとじっくり見たいと後ろ髪をひかれるように、時間の関係で再び土岐市まで戻り、「すり鉢館」に向かう途中で「ギャルリ 百草」へ。

ここは世田谷区尾山台「手しごと」を訪れた際に、民芸にとても詳しい店員さんから「岐阜に行かれるのなら是非訪れてみては」と勧められたところ。

陶作家 安藤雅信さんが主宰するギャラリーで、たくさんの作家さんの作品が展示してあります。
築120年の古民家そのものも一見の価値がありました。
素敵なお庭を眺めるカフェが併設してあり、ここも後ろ髪ひからながらも「すり鉢館」へ向かいました。

 

すり鉢館」。看板と上り窯の煙突が貫録たっぷりに迎えてくれました。

「すり鉢館」はマルホン製陶所が運営していて、隣市から老舗窯元に嫁いできた加藤明子さんが館長を務めていらっしゃます。


実際に使用していた登り窯。


日本のすり鉢の貴重な歴史も展示してあります。


マルホン製陶所は日本のすり鉢のなんと60%を生産しているのだとか!


そしてすり鉢館に併設してある直販所は、「すり鉢は茶色」という固定観念を打ち破る、そのまま食卓に出しても美しく素敵なデザインや、大小様々な大きさがあり、もうテンションがとどまることを知らぬうなぎ上りになりました(笑)


すり鉢をつくる工程も一部展示されています。

栗原はるみさんがプロデゥースするすり鉢もマルホン製陶所でつくっているそうですよ!サインがありました。


窯元を訪れて、生産者の方とお話しながら、直接買い求められる機会というのはとても貴重で、有難い体験をさせていただきました。

窯だしですからお値段はとても安いです。
しかし大量生産とはいえ、一つひとつが手しごと。
使う人が使いやすいように、使い手に喜ばれるように考えてつくられた無私の機能美。
日常使いでも頑丈で丈夫な健やかさ。
そこに「用の美」や「作り手の誠実さ」「簡素であること」など、民芸の精神が随所に表れていて、
何か尊くも、圧倒されるものを肌で感じることができました。


すり鉢館で買い求めた美しいすり鉢たち。
この器の眼を鍛える岐阜の旅で感じとったもの、シンプルに手に取ってワクワクする気持ち、早くお料理がしたくなってしまう楽しさ…そんな想いも一緒に大切な方へ贈るものも含めて連れ帰りました。

時間が経ってこうして振り返っても、あのたくさんの器を見て、手にした時に感じた昂揚感が鮮やかに思い出されます。
器のこと、
その器を生んだ歴史や風土、伝統、
そして民芸の精神。
もっともっと勉強したいと心から感じた、器の眼を鍛える岐阜の旅となりました。