栗の木の精

先日のこと。

庭を整地するために、木を何本か切ることになりました。

はっきりと樹種がわかっているものは栗と桑。

どの木も秋の日差しに黄葉が美しい盛りでしたので、

切ってしまうのは心が痛みました。

それぞれの木に感謝の気持ちを、幹に触れながら伝えました。

その時にはっと閃いたのです♪

先日、染めの勉強のために志村宏さんの染めWS〈冬の会〉に参加した時のこと。

(宏さんは、人間国宝でもある草木染めの第一人者志村ふくみさんのお孫さんにあたります)

(↑宏さん。左側の木は冬青そよご。)

ある事情で庭の梅の木を切ることになった方が、「とても思い入れのある木なので、この木で糸を染めてもらえないか?」と宏さんに依頼されたそうです。

そして、染めた絹糸で着物を仕立て、お孫さんの成人式の振袖になったそうです。

あぁ、なんて素敵なエピソードなんだろう!

木の生命が、そんな風に姿を変えて、新たな人生(木生かな?)を生きることができるなんて!

うちの木を切る時に、そのエピソードを思い出したのです!

栗の木から色をいただくことにしました。

黄葉した葉と枝を、薪ストーブで煮出しました。

煮出している時のなんとも言えない香り♡

甘く、爽やかなのに奥行きのある上品な香り。

栗の「味」とは全く違うのです。

例えて言うなれば、初恋のただただ甘酸っぱい気持ちではなく、

幾度かの人生経験を経ての、ちょっとオトナの恋の甘さのような。

(うーん、表現力が足りない(笑))

これは草木染めをしている人だけが味わえる醍醐味ですね。

ミョウバンで先媒染し、染色はやっぱり薪で加温しながら、最後は一晩放冷させながら浸け染めにしました。

染め上がった色は…

この季節にぴったりの栗色♡

うっすらと香りも残っています。

私達が引っ越してくる前から根付いていた栗の木。

その生命、栗の精を布に映しこむことができたように感じます。

しみじみ、草木染めを勉強して、染められるようになっていて本当に良かった~と思いました。

料理が、食材の生命の移し替えであるならば、

草木染めも同じように草木の生命の移し替えであることを実感しました。

身に纏うのが楽しみです♪