きせつをたべる台所〈芒種編〉

六月は水無月。梅雨入りし、一雨ごとに梅の実が膨らみます。梅雨を「梅の雨」とはよく表現したものですね。

芒種の候。「芒(のぎ)」は稲の穂先にある針のような部分のことだそうです。「芒種」には稲や麦など穂の出る植物の種を蒔く頃という意味があります。

ひだまり暮らしの田んぼは、稲の種まきというよりも、お田植えが終わって初期除草のころ。田車、通称「ゴロカン」で稲の間を行ったり来たり。

芒種の初候は「蟷螂(かまきり)生ず」。
なんと今年は初候始まりの6/5の前日に、我が家の網戸に蟷螂のチビちゃん達がいっぱいいて、七十二候を実体験することに(苦笑)どうも薪ストーブ用の薪に蟷螂の卵がついているのに気がつかず、リビングで羽化してしまったのです。いやはや、衝撃的でした…。

芒種の次候は「腐草(ふそう)蛍と為る」。
我が家の近所には蛍が舞う川があり、毎年夏至の夜に観に行くのが恒例となっています。それはまた<夏至>の時に綴りますね。

芒種の末候は「梅子(うめのみ)黄なり」。

梅の実を洗うために水に浸けた瞬間の、この輝く膜を纏うような様子は、本当に美しくて見惚れてしまいます。梅しごとする時にしか見ることができない幸せな瞬間。

末候に入る6/16の翌日に、黄色く色づき始めた実が一気に木から落ちていました。前日にある程度落ち梅を拾っていたので、たった一日で「梅子黄為り」を実感する光景でした。

2020年はひだまり暮らしの梅畑より青梅をオンラインショップを通じてお届けすることができました。

梅にできるだけ傷をつけないように布手袋をして、優しく手もぎしました。
実は梅が苦手な夫も、梅もぎをとても頑張っていました。みなさんにひだまり暮らしの青梅をお届けしたい一心で。
一粒一粒選果しました。はねだしとなったのは自宅用へ。
オンラインショップの購入特典としてZOOMを使って梅トークしました。ヘタ取りはあっという間に終わって、梅レシピから循環する暮らしまで、話は尽きず。楽しかったな~♪

ひだまり暮らしの季節の手しごととして、2020年の梅しごとは梅シロップと梅干し、かわり梅酒、梅醤油に初挑戦。

青梅よりも早く収穫適期を迎える小梅は全て梅シロップに。追熟も早く、エキスも早く出やすいです。
大好きなアナベルが白く色づく頃にはもう飲めるようになります。

2020年の覚書として。
◎梅シロップ 小梅30㎏
傷梅救済(傷除いて)2.0㎏
◎梅干し 26㎏ 18%
いただいた南高梅2.5㎏ 18%
てるよさんレシピにて1.0㎏ 3%
◎梅酒 約2.0㎏
◎梅醤油 傷梅救済(傷除いて)約1.0㎏

梅干しを漬けています。昨年、我が家のお客様より、お母様がお嫁入りの時より使われてきた甕を譲り受けました。50年近く使ってこられたそうで、家族の歴史を記憶しているかのような大きな甕です。梅干を本気で仕込もうと気合を入れた今年に大活躍しました。

今年は追熟の仕方を少し工夫したので、昨年よりはうまく追熟できました。
来年は、梅醤油を青梅の時に4ℓ保存瓶で作りたいなぁ。傷梅をうまく救済して生かせるように。←覚書。

梅は、調べれば調べるほど効能に満ちて、暮らしの知恵がつまっていますね。
特に梅干しは、我が家ではほぼ常備薬のようです。あれば安心。心強い存在。
この時期特有の倦怠感や頭痛や、ちょっと梅雨寒で肌寒い時など、梅醤番茶にどれだけ助けられたことでしょう。しみじみと美味しいです。

【梅醤番茶レシピ】
<材料>
□梅干し1個 □醤油 小さじ1~2 □生姜の絞り汁 少々 □熱々の番茶または白湯
<作り方>
①カップの中に梅干し、醤油を入れ、つぶしながら混ぜる。
②生姜の絞り汁を入れる。
③熱々(←大事!)の番茶または白湯を入れて、熱いうちにいただく。
※生姜の成分が加熱することで温め効果がアップします。ですので熱々の番茶であることが大事です!

自然療法のお手当は、体調がしんどいときに自分でお手当するのはなかなか大変です。つい億劫になってしまいます。
ですので、我が家では梅干しをたたいて、醤油と混ぜ合わせたペースト状のものをお気に入りの壺に入れて常備しています。(ほんの少し鰹節も。旨味が出るので美味しいのです)ここまでやっておけば、あとはお湯を沸かして、生姜をちょっぴり擂るだけ!
こんなほんの少しの手間をかけておくだけで、いざという時に自分を助けてあげることができますね。

取り出した梅干しの種はご飯を炊くときに一緒に炊き込みます。(炊き上がったら取り出します。ご飯が傷みにくくなります)

また、梅干しを漬けた副産物として「梅酢」があります。
梅のクエン酸と塩分で、調味料としても、水で薄めて飲んで熱中症対策に、抗菌作用は薄めてうがいに。
私は梅酢が欲しくて梅干しを漬けているといっても過言ではないかもしれません(笑)

「梅はその日の難逃れ」とは本当に良く言ったものです。

2020年の芒種の候は、まだまだコロナ禍にあり、緊急事態宣言が明けて、日常の営みが戻りつつあります。県をまたいでの移動も自粛解除になり、恐る恐る様子を見ながらの移動が始まったように感じます。
それでも第二波がくるともいわれ、不安も緊張感も知らず知らずのうちに心身に潜んでいるようです。

自分と大切な人の健康を守り、健やかに日々を暮らしていくためにできること。
人任せにすることなく、自分の身と手を働かせて守り、築くもの。
それが昔から連綿と続いてきた梅しごとの中には知恵としてつまっているのだなぁと、しみじみと感じます。
コロナ禍にあっても揺らぐことなく、こつこつと、淡々と手を動かし続ける芒種の候です。